心臓血管外科
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スタッフ紹介
診療科の実績
ハイブリッド手術室
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診療科のご紹介

当科は熊本含め南九州の皆様に貢献すべく1988年(昭和63年)に開設された歴史があります。開設当初より京都大学医学部心臓血管外科学教室からのスタッフによる質の高い医療を行なっており、これまでに行われた心臓大血管手術は約5,500例以上、手術総数は10,000例以上におよびます。

初代の坂田隆造部長(1988~1999年在籍、その後鹿児島大学教授、京都大学教授)から代を重ね、本年4月より第5代目部長として新井が就任いたしました。成人の心臓血管領域において、通常の開心術はもちろんのこと、経カテーテル的弁膜症手術、大動脈ステントグラフト内挿術、さらにそれらを組み合わせたハイブリッド手術において多くの実績があります。

心臓血管疾患においては個別の医師のみではなくハートチームで治療方針を決めることが安全かつ有効と言われております。当科は循環器内科と風通しの良いハートチームを結成し、熊本県及び地域医療に貢献します。

なお、先天性心疾患や、静脈瘤、膝下の末梢血管には対応しておりません。

主な対象疾患

冠動脈バイパス術

低侵襲術式である人工心肺を用いない心拍動下冠動脈バイパス術(OPCAB)を積極的に行なっております。また、長期的な予後を改善するために動脈グラフトを多用するのみならず、長期の開存が明らかになってきたNon touch大伏在静脈を使用する手術を行っております。

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弁膜症手術

僧帽弁閉鎖不全症に対しては弁形成術を第一選択としており、解剖学的形態で安全が担保できる場合は胸腔鏡補助下での小開胸低侵襲手術(MICS)も行います。

大動脈弁に対してはMICSのみならず、循環器内科とともにハートチームで人工弁置換術と経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)の選択も適正に行なっております。

TAVI に関してはAlternative Approachのプロクターが在籍しており、通常のアプローチTAVIが困難な症例にも精通しております。

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大動脈瘤手術

上行大動脈、弓部大動脈、胸部下行大動脈、胸腹部大動脈、腹部大動脈に至るあらゆる領域に対して人工血管置換術を行っております。

大動脈緊急症に対しても十分な経験があります。特に脳血流障害を伴う急性大動脈解離に対して、頸動脈にdirect cannulationを行うことで障害を最小限に食い止める工夫を行なっております。

大動脈ステントグラフト内挿術にも精通しており、患者様の年齢や体力を考慮して、開胸・開腹手術と低侵襲のステントグラフト内挿術のいずれがより良いかを偏ることなく十分に検討し、治療を提供しております。

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透析患者さんに対する治療

腎臓内科、透析アクセス科と緊密に連携しており、きめ細かな治療と周術期管理により透析患者様に対しても良好な結果が得られ、国内のみならず国際的な論文も発表しています。

心房細動に対する治療

通常のMaze手術のみならず、左心耳マネージメントとして胸腔鏡補助下での左心耳閉鎖・アブレーション手術(ウルフ オオツカ手術)を提供できます。

先進の手術治療

京都大学心臓血管外科の系列施設はもとより、全国の各領域のエキスパートの心臓血管外科医との交流があり、必要な場合には招聘し安全に技術を提供することが可能です。

スタッフ紹介

スタッフ写真
部長
新井 善雄
(あらい よしお)
平成6年卒
専門分野
成人心臓血管外科全般/
弁膜症・大動脈瘤・狭心症・虚血性心疾患
低侵襲心臓手術
経カテーテル弁膜症手術
大動脈ステントグラフト手術
指導医・専門医・認定医
心臓血管外科専門医認定機構(3学会合同)専門医、修練指導者
日本外科学会専門医
日本血管外科学会認定医
日本経カテーテル心臓弁治療学会指導医
腹部大動脈ステントグラフト指導医
胸部大動脈ステントグラフト指導医
経カテーテル的大動脈弁置換術指導医、プロクター
医学博士
京都大学学外講師
医長
瀧 智史
(たき ともふみ)
平成12年卒
専門分野
心臓血管外科全般
指導医・専門医・認定医
心臓血管外科専門医認定機構(3学会合同)専門医
日本外科学会専門医・認定医
日本循環器学会専門医
医員
原田 寿夫
(はらだ ひさお)
平成16年卒
専門分野
心臓及び大血管の外科
末梢動脈・静脈の外科
指導医・専門医・認定医
心臓血管外科専門医認定機構(3学会合同)専門医
日本外科学会専門医

診療科の実績

2023年 心臓血管外科手術件数(139件)
手術件数
⦁ 心臓・胸部大血管手術 81例
手術分類 例 数
冠状動脈バイパス術 10例
弁膜症手術 29例(TAVI 18例)
冠動脈バイパス手術+弁膜症手術 5例
胸部大動脈手術 26例(TEVAR 2例)
その他 11例
⦁ 腹部・末梢血管他手術 58例
手術分類 例 数
腹部大動脈瘤 20例(EVAR 10例)
閉塞性動脈硬化症 2例
その他 36例

■心臓大血管手術は高侵襲の治療ですが、手術死亡率と合併症を限りなくゼロにすることを常に目指して努力しています。冠動脈バイパス術、心臓弁膜症手術、大血管手術すべての分野で良好な成績を維持しております。

成績
  • 「急性大動脈解離」以外は初回、単独、待機手術での統計
  • 「全国平均(%)」は2017年胸部外科学会統計の全国データ
  • 「熊本中央病院(%)」は過去4年間(2017年〜2020年)のデータ
熊本中央病院では冠動脈、弁膜症、胸部大血管とすべての分野で全国平均よりも手術死亡率が低く抑えられています。

ハイブリッド手術室

当院では、平成30年4月より「ハイブリッド手術室」を稼働しました。この「ハイブリッド手術室」とはどのようなものなのか、ご紹介します。

ハイブリッド手術室とは?

最近定着している「ハイブリッド(hybrid)」という言葉の意味は、「異なった要素を混ぜ合わせて一つの目的をなす」ことです。」

「ハイブリッド手術室」とは、従来は別の場所に設置されていた「手術台」と「血管撮影装置」を組み合わせた手術室のことで、外科手術による治療とカテーテルによる低侵襲(体に負担の少ない)な血管内治療を、手術室と同等の空気清浄度を保ちながら同一の治療室で行うことが可能となります。

ハイブリッド手術室を使用する利点とは?

1.高度先進医療を安全に施術できる

高性能の心臓・血管X線撮影装置、可動性の高い手術台、高精細な大型モニターなどを揃えており(図1)、また、3D機能や画像融合機能を搭載することで、従来に比べて極めて高度で精密な最新の治療が可能となります。

高度な医療技術が必要な難しい症例では、緊急的にカテーテル治療から外科的治療に切り替える必要が生じる可能性もありますが、ハイブリッド手術室ではそのような時も迅速に対応できます。

図1:ハイブリッド手術室全景

ハイブリッド手術室全景
2.低侵襲治療が可能

従来は外科手術しか選択肢がなかった疾患に対してカテーテルによる血管内治療が可能となり、手術時間の短縮や出血量の減少など、患者さんの体の負担が少なくなります。

また、術中のX線透視画像に術前CTなどから抽出した3D画像を重ねて表示する(図2)ことで精確な血管走行などの把握が可能となり、造影剤検査回数を減らすことができます。 従来に比べ造影剤使用量やX線被ばく量を低減できるという意味でも低侵襲です。

図2:術中透視画像とCT画像の重ね合わせ

術中透視画像とCT画像の重ね合わせ

どんな治療ができるのか?

1.大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI/TAVR)(図2A

重度の大動脈弁狭窄症は心不全や失神、場合により突然死も来す疾患です。従来の開心術ではリスクが高すぎて治療できない高齢の患者さんに対して、開胸せずに低侵襲のカテーテル治療で人工弁置換を行う治療です。

2.大動脈ステントグラフト内挿術(胸部大動脈瘤、腹部大動脈瘤)(図2B

大動脈瘤とは大動脈の血管壁に瘤ができる疾患で、拡大し破裂すると致死的です。ステントグラフトという人工血管を、カテーテルを用いて大動脈瘤内に挿入し破裂を予防します。体の負担は従来の外科手術に比べ極めて低いです。

3.不整脈に対する各種心臓デバイス植込み術(ペースメーカー、植込み型除細動器)

手術室と同等の空気清浄度を保てるため、よりクリーンな環境で施術ができます。その他、冠動脈バイパス術や下肢血行再建術の術中血流評価などにも有効です。

近年の医療は、より低侵襲な治療を目指す方向へと進化しているため、今後も新たな分野でのハイブリッド治療法の導入が期待されます。

当院でもハイブリッド手術室を活用し、患者さんの身体的な負担を軽減してより安全で効果的な治療の提供を目指していきます。

日本における成人心臓血管外科手術のレジストリへのご協力のお願い

当院では多施設共同研究『日本における成人心臓血管外科手術のレジストリ』に主たる研究機関として参加しております。

この研究は、心臓や血管に病気をお持ちで手術が必要とされた個々の患者さんがもっともふさわしい治療法を選択できるようデータを蓄積することが目的です。

詳細は下記ページをご覧下さい。

日本における成人心臓血管外科手術のレジストリへのご協力のお願い
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