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疾患概要

乳がんは、母乳を産生・分泌する乳腺組織の細胞が「がん化」することにより発生する悪性の病気です。日本では、生活習慣や食事の欧米化などにより増加しており、「女性のがん」の中で最も多いのが「乳がん」です。日本では11人に1人が乳がんになります。

一方で、きちんとした診断・治療を行えば、他のがんに比べて、命にかかわることがそれほど多くないのも特徴です。

乳がんの特徴(サブタイプ)や進み具合(ステージ)、身体の状態に合わせて個別化(いわゆるオーダーメイド)した最適な治療を受けることが重要です。

種類・分類

細胞の増殖スピード、女性ホルモンの感受性、増殖に関わるたんぱく質の発現状況の違いなどから、「サブタイプ」と呼ばれるいくつかの種類・分類があります。「サブタイプ」により相性のいい薬物療法の種類も異なります。

病気の進行状況も、周囲の組織に浸潤したり、身体の他の部分に転移したりする能力に乏しい「非浸潤がん」であるステージ0から、生命の維持に必要な重要臓器に転移が確認されるステージ4まで5段階に分けられます。

症状

症状がある乳がんは進行した「浸潤癌」であることが多く、多くは入浴時などにしこりを触ることがあります。進行した乳がんでは、皮膚を破って出てきたものは出血や痛みを伴うことがあります。他の内臓に転移した乳がんでは、転移した内臓によって、せき、呼吸困難、骨折、食欲不振、黄疸、意識障害、麻痺などが起こります。

しこりになる前の早期の乳がんでは、血液のような分泌物が乳首からでることがあります。
ときどき感じる乳房の違和感や痛みは乳がんが原因であることは少なく、乳がんのしこりが原因の症状であれば、しこりが消えることはないため症状がずっと継続します。

乳がん検診

ほとんどが無症状で、生命に影響がなく手術のみで完治する早期の乳がん「非浸潤癌」は、しこりとして感じられることがないため、この段階で早期発見するためには、自治体などで2年毎に実施される乳がん検診など、精度管理認定施設でのマンモグラフィーによる乳がん検診を定期的に受診することが重要です。50歳以上では84%の乳がんが発見できるとされています。

検査

視触診、マンモグラフィー、超音波検査で乳がんが疑われる場合は、穿刺吸引細胞診FNACや針生検CNB、吸引式針生検VAB(マンモトーム生検)などを行い、顕微鏡で乳がんの細胞や組織があるかどうかを確認します。

乳がんであった場合には、必要に応じて、CTや骨シンチ、血液検査、心電図、心エコー検査、肺機能検査など、治療方法を検討するための検査を追加します。

治療に必要な情報は、腫瘍組織の病理学的な検査により生物学的特徴「バイオロジー」を確認します。

治療

治療方針は、腫瘍のバイオロジー、腫瘍の進行度「ステージ」、患者さんの全身機能の状態や社会的な状況に応じて、個別化、いわゆる「オーダーメード」で計画を立てていきます。

完治を期待できる乳癌であることが判明した場合、手術を行います。手術には、乳腺を部分的に切除する方法(部分切除)と乳腺全部を切除する方法(全摘)があります。通常、部分切除の場合は、局所再発の可能性を全摘手術と同等にするため、残存乳房に対して放射線治療を追加します。

手術のための入院は、乳房部分切除が4〜5日間、乳房全摘・郭清が5〜9日間程度で退院できます。残存乳房に対する術後放射線治療は外来通院(通常25回/16回で完了する寡分割照射も対応可能)で行います。

ご希望に応じて形成外科と連携して、さまざまな乳房再建手術も検討できます。

浸潤癌であった場合は、存在が疑われる微小な遠隔転移を制御するため全身の薬物療法を行います。乳がんの大部分を占める女性ホルモンの影響を受けているタイプの乳がんでは、女性ホルモンの影響を抑制する治療を5〜10年間行います。転移の可能性が高い場合や女性ホルモンの影響を抑える治療の効果が期待できない場合は、抗がん剤や分子標的治療薬による治療が必要になります。

残念ながら完治が期待できない乳がんや再発してしまった乳がんに対しては、進行を遅らせて日常生活を長く続けるため、病変を小さくして症状を和らげるための治療を行います。抗がん剤を使わなければならない場合もありますが、通常は女性ホルモンの影響を抑制する治療など、体の負担が少なく期待される効果が大きい治療から始めます。

必要に応じて、全身の乳がん病変を制御する薬物療法だけではなく、心身共に症状を和らげるための緩和ケア治療も同時に行います。

抗がん剤などによる治療も外来化学療法室で行い、入院が必要なほど弱った状態では、毒性の強い治療などは避け、体の負担を和らげる治療を行います。

それぞれの治療は、外科、形成外科、腫瘍内科、放射線科、緩和ケア内科などの診療科や看護部、薬局、外来化学療法室、リハビリテーション科などの部門と連携したチーム医療体制で行われます。

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