治療
治療方針は、腫瘍のバイオロジー、腫瘍の進行度「ステージ」、患者さんの全身機能の状態や社会的な状況に応じて、個別化、いわゆる「オーダーメード」で計画を立てていきます。
完治を期待できる乳癌であることが判明した場合、手術を行います。手術には、乳腺を部分的に切除する方法(部分切除)と乳腺全部を切除する方法(全摘)があります。通常、部分切除の場合は、局所再発の可能性を全摘手術と同等にするため、残存乳房に対して放射線治療を追加します。
手術のための入院は、乳房部分切除が4〜5日間、乳房全摘・郭清が5〜9日間程度で退院できます。残存乳房に対する術後放射線治療は外来通院(通常25回/16回で完了する寡分割照射も対応可能)で行います。
ご希望に応じて形成外科と連携して、さまざまな乳房再建手術も検討できます。
浸潤癌であった場合は、存在が疑われる微小な遠隔転移を制御するため全身の薬物療法を行います。乳がんの大部分を占める女性ホルモンの影響を受けているタイプの乳がんでは、女性ホルモンの影響を抑制する治療を5〜10年間行います。転移の可能性が高い場合や女性ホルモンの影響を抑える治療の効果が期待できない場合は、抗がん剤や分子標的治療薬による治療が必要になります。
残念ながら完治が期待できない乳がんや再発してしまった乳がんに対しては、進行を遅らせて日常生活を長く続けるため、病変を小さくして症状を和らげるための治療を行います。抗がん剤を使わなければならない場合もありますが、通常は女性ホルモンの影響を抑制する治療など、体の負担が少なく期待される効果が大きい治療から始めます。
必要に応じて、全身の乳がん病変を制御する薬物療法だけではなく、心身共に症状を和らげるための緩和ケア治療も同時に行います。
抗がん剤などによる治療も外来化学療法室で行い、入院が必要なほど弱った状態では、毒性の強い治療などは避け、体の負担を和らげる治療を行います。
それぞれの治療は、外科、形成外科、腫瘍内科、放射線科、緩和ケア内科などの診療科や看護部、薬局、外来化学療法室、リハビリテーション科などの部門と連携したチーム医療体制で行われます。