治療
初回の気胸の非手術再発率は50%、再発した場合の再再発(3回目)率は60%以上です。従って再発気胸は手術適応です。
安静、経過観察 - 初回の気胸であり、かつ軽症気胸、肺のしぼみが少しだけ。
脱気 - 気胸の程度や患者さんの状況(どうしても入院できないなど)に合わせて選択。
入院治療が基本。
- 一回穿刺脱気:細い柔らかい針を刺して注射器で余分な空気を抜き取ります。
- 一方向弁付き脱気チューブ:入院ができない症例です。チューブを胸腔内に刺入し留置して胸腔内から外にしか通らない一方向弁を接続して空気を抜きます。
- 持続吸引(胸腔ドレナージ):チューブを胸腔内に刺入し留置してポンプで持続的に空気を抜きます。入院が必要で一般的な非手術(内科的)治療です。
手術 - 胸腔鏡を使用。全身麻酔。基本的には患側の腋窩(ワキ)に2cm程の傷が2か所。
所要時間は標準的には約1時間。
- 手術の適応となる症例
1 再発性
2 難治性 - 空気漏れが治まらない
3 同時両側性 - 左右同時に気胸が発生
4 血気胸 - 出血が持続している可能性がある場合は緊急手術
5 社会的適応 - 初回気胸だが再発すると困る。受験生やパイロットなど。
- 手術の内容
原因となっている部位、多くは穴の開いたブラを切除(自動縫合器)、縫縮(縫いつぶす)、凝固(電気メスで加熱)、結紮(根っこを縛る)します。
切除するのが最も簡便で効果的です。
当院では肺(ブラ)を切除する際に残る肺を保護するため、自動縫合器の縫合面に補強材を使用しています。さらに、切除した部位の周囲や好発部位の肺の表面に補強シートを被せます。補強材と補強シートは、人工合成材で水溶性、吸収性であるため体内には残存しません。経過中に補強シートは肺の表面の膜に軽い炎症を起こして肥厚させることで再発を防ぎます。フィブリンのり(血液製剤)は通常使用しません。
当院では術後は6時間後から飲食、歩行自由です。経過が良ければ手術翌日に胸腔ドレーン(胸腔内に入れたチューブ)を抜き、その日に退院可能です。
創の抜糸は不要です。1週間後にレントゲンで肺がきちんと膨らんでいることを確認します。
- 術後再発率 - 全年齢:4.3%、20歳以下:7.4%(当院2009.1.1〜2014.5.1:123例)
難治性気胸に対する特殊な治療 - 全身状態が悪く手術が困難な症例には以下のような治療
を行うことがあります。
胸腔内炎症惹起薬剤投与 - 胸腔ドレーンから胸腔内に炎症を惹起させる薬剤を注入します。
肺表面の膜(臓側胸膜)に炎症を起こして肺の穴をふさぐのが目的で
す。結果的に肺と胸腔(胸壁)が癒着するので、「胸膜癒着術」と呼ば
れることが多いです。
気管支鏡下気管支塞栓術 - 空気漏れを起こしている穴につながる気管支を中から栓をする方法
です。シリコン製の塞栓材を気管支内視鏡を使って誘導します。