疾患概要
胃がんは、若年者のヘリコバクターピロリ菌(ピロリ菌)の感染者数の減少に伴い、近年減少傾向にありますが、現在でも死亡数の上位(男性2位、女性4位:2019年)を占めるがんです。ピロリ菌の持続感染が最も重要なリスク要因としてあげられていますので、現在では胃がん発症予防のため除菌療法が広く行われるようになってきています。
症状
早期癌のほとんどは無症状で、進行癌であっても無症状のことがあります。進行癌では一般的に胃痛や胃部不快感、胸やけ、嘔気、食欲不振、貧血、黒色便などの症状がありますが、胃がんに特有の症状ではなく胃潰瘍や胃炎などでも出現します。検査をしなければ確定診断には至りませんので、早目に内視鏡検査(胃カメラ)を受けることをお勧めいたします。
検査
早期がんの多くが、検診(胃内視鏡検査、胃X線検査など)によって無症状で発見されています。早期発見のためには、症状がなくても胃がん検診を定期的に受けることをお勧めいたします。内視鏡検査で病変が見つかった場合、良性なのか悪性(胃がん)なのか診断するために病理組織検査を行います。
胃がんの種類
病理組織検査によって、胃がんは大きく2つの種類(組織型)に分けられます。分化型(乳頭型腺癌、高分化型管状腺癌、中分化型管状腺癌)と未分化型(低分化腺癌、印環細胞癌)の2つです。
胃がんの病期
病気の進み具合(病期)は、3つの要素1.がんの深さ:壁深達度(T)、2.リンパ節転移(N)、3.遠隔転移(肝転移、肺転移、腹膜播種など)(M)で決定されます。これに組織型を考慮して、内視鏡治療、外科的胃切除、化学療法(抗がん剤治療)、緩和医療のどの治療を行うのか、治療方針が決定されます。日本胃癌学会が発刊している胃癌治療ガイドラインには、病期毎に推奨される治療法が記載されており、当院でも最新のガイドラインに沿って治療法を決定しております。
胃がんの治療法
内視鏡治療
「がんを取り除きかつ胃を残す」侵襲の最も少ない治療法です。現在では内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が主流です。内視鏡治療の適応かどうかは主治医とご相談ください。
外科治療(腹腔鏡補助下胃切除、開腹胃切除)
腹腔鏡補助下胃切除術:早期胃がん(癌が粘膜下層までで留まる癌)の中で内視鏡的治療の適応にならない症例は、腹腔鏡での治療(腹部に1〜2cmの穴を4〜5か所開けて、お腹を大きく切らずに切除する方法)を行っております。傷が小さいため、体の負担が少なく術後の回復が早いとされています。
進行がん(癌が筋層以深に浸潤する癌)に対しては、従来通り「胃がん治療ガイドライン」に沿って、開腹で胃切除を行っています。がんのできた場所や大きさによって、幽門側胃切除(胃の出口側約2/3〜4/5を切除する)か胃全摘術(胃を全部切除する)を選択します。
化学療法(抗がん剤治療)
ステージの進んだ胃がんに対しては、化学療法(抗がん剤治療)が選択されます。
当院では、消化器内科と外科が同一の病棟で、内科と外科の垣根のない「消化器病センター」として入院加療を行っています。看護師も消化器疾患に精通した人材が多く、地域連携ナース、緩和医療ナース、がんリハビリ専門のスタッフなどと協力し、専門性の高いチーム医療を実践していますので、お気軽にご相談ください。