診療科のご案内

心臓血管外科

  • 基本情報
  • スタッフ紹介
  • ハイブリッド手術室
  • 診療科の実績
  • 臨床研究について

ハイブリッド手術室

当院では、平成30年4月より「ハイブリッド手術室」を稼働しました。この「ハイブリッド手術室」とはどのようなものなのか、ご紹介します。

ハイブリッド手術室とは?

最近定着している「ハイブリッド(hybrid)」という言葉の意味は、「異なった要素を混ぜ合わせて一つの目的をなす」ことです。」

「ハイブリッド手術室」とは、従来は別の場所に設置されていた「手術台」と「血管撮影装置」を組み合わせた手術室のことで、外科手術による治療とカテーテルによる低侵襲(体に負担の少ない)な血管内治療を、手術室と同等の空気清浄度を保ちながら同一の治療室で行うことが可能となります。


ハイブリッド手術室を使用する利点とは?

  1. 高度先進医療を安全に施術できる

高性能の心臓・血管X線撮影装置、可動性の高い手術台、高精細な大型モニターなどを揃えており(図1)、また、3D機能や画像融合機能を搭載することで、従来に比べて極めて高度で精密な最新の治療が可能となります。

高度な医療技術が必要な難しい症例では、緊急的にカテーテル治療から外科的治療に切り替える必要が生じる可能性もありますが、ハイブリッド手術室ではそのような時も迅速に対応できます。


図1:ハイブリッド手術室全景


  1. 低侵襲治療が可能

従来は外科手術しか選択肢がなかった疾患に対してカテーテルによる血管内治療が可能となり、手術時間の短縮や出血量の減少など、患者さんの体の負担が少なくなります。

また、術中のX線透視画像に術前CTなどから抽出した3D画像を重ねて表示する(図2)ことで精確な血管走行などの把握が可能となり、造影剤検査回数を減らすことができます。従来に比べ造影剤使用量やX 線被ばく量を低減できるという意味でも低侵襲です。


図2:術中透視画像とCT 画像の重ね合わせ


どんな治療ができるのか?

  1. 大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI/TAVR)(図2A)

重度の大動脈弁狭窄症は心不全や失神、場合により突然死も来す疾患です。従来の開心術ではリスクが高すぎて治療できない高齢の患者さんに対して、開胸せずに低侵襲のカテーテル治療で人工弁置換を行う治療です。

  1. 大動脈ステントグラフト内挿術(胸部大動脈瘤、腹部大動脈瘤)(図2B)

大動脈瘤とは大動脈の血管壁に瘤ができる疾患で、拡大し破裂すると致死的です。ステントグラフトという人工血管を、カテーテルを用いて大動脈瘤内に挿入し破裂を予防します。体の負担は従来の外科手術に比べ極めて低いです。

  1. 不整脈に対する各種心臓デバイス植込み術(ペースメーカー、植込み型除細動器)

手術室と同等の空気清浄度を保てるため、よりクリーンな環境で施術ができます。その他、冠動脈バイパス術や下肢血行再建術の術中血流評価などにも有効です。


近年の医療は、より低侵襲な治療を目指す方向へと進化しているため、今後も新たな分野でのハイブリッド治療法の導入が期待されます。

当院でもハイブリッド手術室を活用し、患者さんの身体的な負担を軽減してより安全で効果的な治療の提供を目指していきます。