シャントPTA 当院の特徴
これまで血液透析に必要不可欠なバスキュラーアクセス(VA)不全に対する治療法として外科手術が中心でした。1990年代に入り、VA狭窄の治療法としてバルーンカテーテルによるPercutaneous transluminal angioplasty(PTA)が普及し、現在ではVascular access intervention therapy(VAIVT)と総称されています。VAIVTは外科手術と比較して低侵襲かつ同一病変の反復治療が可能で、作製時のVA機能と形態を維持できることが特徴で、VA狭窄・閉塞病変治療の第一選択と位置づけられ、当院含め多くの施設で行われています。当院での治療件数も年々増加傾向です。(図1)
シャントPTA治療件数の変遷
図1
自己血管(Arteriovenous Fistula;AVF)や人工血管(Arteriovenous Graft;AVG)内シャント狭窄に対する待機的なシャントPTAの初期成功率は高く(図2)、当院ではその後も厳重なフォローアップを行い、必要に応じて再PTAを行う事で、シャント寿命の延長が得られています。その他の当院での試みを2つご紹介します。
(図2)シャントPTAの治療成績成功率(2015年1月~2016年12月)AVF待機的PTA | 100% (274/274) |
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AVG待機的PTA | 100% (108/108) |
AVF閉塞に対する血栓除去術 | 90.9% (10/11) |
AVG閉塞に対する血栓除去術 | 85.7% (6/7) |
合計 | 99.5% (398/400) |
①造影剤使用低減の試み(図3:血管造影あり 図4:血管造影なし)
X線透視と血管エコーを上手く組み合わせることで、血管造影を行わずにシャントPTAを完遂することができます。ガイドワイヤー操作やバルーン位置、狭窄部位確認など最大限エコーを活用しています。エコーの利点として簡便・情報の多さ・低侵襲があります。また造影を行わない利点として、造影剤アレルギー患者へ施行可能、造影剤アレルギー対策(大量ステロイドなど)が不要なためその合併症を回避できる、新たな造影剤アレルギーが防止でき、今後のCTやPCIなど造影剤が必要な時に有利であることが挙げられます。図の如く、2018年以降は約98%で血管造影は行っていません。(図5)
図3
図4
図5
②ほぼ全例が入院治療
当院ではシャントPTA翌日まで合併症(アレルギーや急性閉塞など)の出現の有無を観察し、また翌日当院で透析を施行して、脱返血を含めた透析状況を確認し、問題の無いことを確認した後に退院としています。
血液透析を円滑に継続していくうえでバスキュラーアクセスは非常に重要で、「透析患者の命綱、生命線」や「アキレス腱」と言われます。VAIVTの進歩は近年めざましいものがありますが、問題点として再狭窄率の高さがあり、これに対する治療戦略の確立、デバイスの導入や開発が今後の課題といえます。
透析アクセスにつきまして何かお困りのことがありましたら、何時でも気軽にご連絡下さい。
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