- 1.体重をはかりましょう
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ご自宅に体重計がありますか?
体重をはかることで、食事の摂取エネルギーと活動量が見合っているかを知ることができます。一日に何度もはかるのではなく、毎日同じような時間帯(例えば朝の排便後や入浴時など)にはかり、日ごとの差を見ていくことが大切です。表やグラフにして記録するのもよいですね。
まずは、適正体重やBMIでご自分の体格の現状を把握しましょう。
体重が増える、または「肥満」の状態が続いているのは、活動量に対して食事の摂取エネルギー量が多い場合です。C型肝炎ウイルスが原因の場合、ウイルスは細胞内の脂肪(中性脂肪)を利用して増殖するため肥満はよくありません。インターフェロンなどの治療の効果も十分に発揮できなくなります。食事内容や日常の活動量を見直して、少しずつ適正に近付けましょう(極端なダイエットは危険です。計画的に減らすことをお勧めします)。ただし、浮腫(むくみ)で体重が増える事もありますので、急に何kgも増えた場合には、必ず主治医に相談してください。
反対に体重が減るのは、活動量に対して食事の摂取エネルギー量が少ない場合、または炎症や他の病気により必要なエネルギー量が増している場合です。急な体重減少がある場合は、原因を含めて医療機関に相談しましょう。
「やせ」の場合でも、どんどん減っているのではなく、今の体重が維持できていれば問題ないこともありますが、食事内容を確認してみましょう。
- 2.特別な制限がない場合の食事
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2-1.主食、主菜、副菜をそろえてバランスをよくする。
主食(ご飯、パン、めん)体にも脳にも欠かせない炭水化物を多く含みます。特に、日本型食生活(和食)の基本である主食(ご飯)を減らしすぎると、空腹感から主菜や間食が増える場合がありますので注意しましょう。
1日3食の場合、男性200~250g、女性150~200gが1食のご飯の目安です。
主菜(肉、魚、卵、大豆製品、乳製品のおかず)たんぱく質を多く含みます。同時に脂肪も多く含みますので、摂りすぎは肥満につながります。1食にどれか1皿、調理前で手の平1/2程度が目安です。
副菜(野菜、きのこのおかず)ビタミン、ミネラル、食物繊維を多く含み、いいことづくしの食べ物です。一日の目安量(300g以上)を満たすには、 毎食調理した状態で握りこぶし1個分が目安です。 サラダだけではなく、和え物、酢の物、煮物、炒め物などいろいろな調理方法で季節感も楽しみましょう。
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2-2.脂肪の量と質に注意しましょう(動物性脂肪の摂り過ぎに注意)
- 脂肪は大切な栄養素ですが、摂り過ぎには注意が必要です。質が良くても悪くても、エネルギー量が多いので、脂肪の摂り過ぎが肥満につながります。
- 脂肪の摂取目安量は、肉や魚や乳製品をはじめとする様々な食品中に含まれる量と、調理に使う量を合わせて、1日に40~50g程度です(1日のエネルギーの20~25%)。 調理での目安量は、1日10~20g(大さじ1~2杯)となります。
- 動脈硬化を促進する飽和脂肪酸を多く含む肉類、乳製品の使用量が多い人は、魚や大豆製品に変える、調理には動物性のバター、植物油の中でもマヨネーズやサラダ油、マーガリンなどを一価不飽和脂肪酸の多い(酸化しにくい)オリーブ油やキャノーラ油に置き換える程度にし、適量を守ることが大切です。
- 加工食品や、菓子類にも多くの脂肪が含まれますので注意しましょう。
≪油(脂肪)の多い料理≫
カレー、グラタン、ハンバーグ、トンカツやから揚げなどの揚げ物、ハンバーガー、ピザ、ラーメン、チャーハン、スパゲティなど≪油(脂肪)の多い食品≫
ウインナー、ベーコン、ハム、バラ肉、チーズ、生クリーム、チョコレート、アイスクリーム、菓子パン、調理パンなど
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2-3.野菜を毎食摂って、ビタミンや食物繊維を十分補う
- 野菜、果物にはビタミン類、食物繊維が豊富に含まれます。
- ビタミン類は人間の体にとって「潤滑油」のようなものです。体の調子を整えてくれます。また、お肌の調子も良くなります。
- 食物繊維は満腹感を与えてくれたり、便秘の予防、改善にもつながります。
- 傷ついた(酸化)細胞の修復をしてくれるのがビタミンCです。間食にはお菓子ばかりでなく、果物を取り入れるのもよいです。
- 野菜は毎食、果物は1日1回を目安に積極的に取り入れましょう。
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2-4.塩分を摂り過ぎない
- 一般的に日本人は塩分を摂り過ぎていると言われていますので、他の病気の予防のためにも、普段から減塩に心がけることが大切です。
- 成人の場合、男性は1日9g、女性は1日7.5g以下が塩分の目安です(1食2.5~3g以下)。
- 高血圧、心疾患などがあれば1日6g未満となります(1食2g未満)。
- 塩蔵品(梅干し、漬物、佃煮など)、加工食品(ちくわ、ウインナーなど)、インスタント食品には多くの塩分が含まれますので注意しましょう。
- めん類は汁やつゆを残すと上手に減塩できます。
- 汁物はなるべく具だくさんにしましょう(水分が減ると調味料が少なくても美味しく食べられます。また、野菜のうま味も出てさらに美味しく仕上がります)。
- 何にでも醤油をかけるのは控えましょう。
- 酢、香辛料、生姜、ごま、しそなどで風味豊かにすると、うす味でも美味しく食べられます。
- 味覚には「慣れ」が大きく関わりますので、外食や総菜を食べて、「味が濃い」と感じるようであれば、ご自宅の味付けがうす味にできている目安になります。
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2-5.アルコールについて
- アルコールは肝臓で処理されるため、摂り過ぎると肝臓への負担を増やします。また、肥満の原因にもなります。なるべく少ない方がよいのですが、目安量を主治医と相談しましょう。アルコールが原因の肝臓病の場合は原則禁酒となります。
- 3.肝臓の機能が低下した場合(肝硬変)の食事
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2-1.食事中のたんぱく質を制限する
たんぱく質を多く含む食品を食べすぎると、血中のアンモニア濃度が上昇し、脳症を起こす原因となります。主菜(肉、魚、卵、大豆製品、乳製品のおかず)には、たんぱく質が多く含まれるので、摂りすぎに注意しましょう。
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2-2.塩分・水分を控える
特に腹水がある場合には、食塩制限、水分制限が必要となります。塩分の目安は1日6g未満となります(1食2g未満)。減塩の工夫は2.の④をご参照ください。水分は医師の指示量を守りましょう。
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2-3.夜食(LES:Late Evening Snack)を上手に取り入れる
肝臓での糖質の貯蔵量が減少している状態になると、夕食から朝食までの時間が長いため、早朝時に体が飢餓状態になると言われています。それを予防するために、200kcal程度の栄養バランスのよい食品を就寝前に摂る方法があります。
例)おにぎり、蒸しパン、アミノ酸製剤など -
2-4.糖質と血糖値を考慮する
糖尿病を合併している場合や、食後の血糖値が上昇しやすい状態になると、甘いものやジュースなどは一度にたくさん食べないようにしましょう。そのためには3食きちんと摂ることが大切です。
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2-5.生物(なまもの)に注意
肝臓での生体防御機能が低下しているため、感染症が重症化しやすくなりなす。特に、夏場の魚介類は海水温度が上昇し菌が付着しやすいので注意が必要です。
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2-6.便秘予防は脳症予防
便秘は、腸管内でのアンモニアの産生を促し脳症の誘因になりやすいので、野菜・果物などを食事に十分摂り入れて、食物繊維の摂取不足にならないようにしましょう。
- 4.C型肝炎ウイルスが原因の場合には、鉄制限が必要です 。
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C型慢性肝炎では、肝臓に鉄が過剰に蓄積し病状を悪化させる傾向がみられます。鉄を多く含む食品を控え、肝臓の負担を減らしましょう。
【鉄を多く含む食品】
- レバー、その他の内臓類
- 赤身の肉や魚(マグロ、かつお、血合い部分)
- しじみ、アサリ、かき
- 豆類、豆製品、ココア
- 鉄強化食品、健康食品、サプリメント
- 昆布、ひじき等の海藻類