急性期病院でのリハビリテーションの役割
前本英樹
当院では毎日多数の患者さんが入退院されています。病気が治り、手術をしたらまた元通りの生活に戻るのが理想です。しかし、病気が重く治るのに時間がかかるような患者さんや、80才を超えるようなご高齢の患者さんはすぐに元気になるわけではありません。病気や手術によって体力が消耗するのに加え、安静に寝ている時間が長くなるほど筋力と体力が低下します。そのため、自宅に帰りたくても帰れない状況に陥る患者さんが以前は多くおられました。現在、当院では様々な病気で入院されている患者さんに対して、筋力の維持、体力の早期回復、自宅退院が円滑になるように専門的な立場からリハビリテーションを行っています。今回は当院で提供しているリハビリテーションの内容をご紹介します。
主に関節、脊椎の手術後の方にリハビリを行っています。整形外科術後は適切な運動をしなければ、歩けなくなったり関節が固くなるのなどの後遺症が起こりやすいためです。
たばこを吸って発症するCOPDや肺炎で入院された方、肺癌の周術期の患者さんなどに対して、痰を出して肺の中の環境を整えたり、息切れ無く歩けるようにリハビリを行っています。近年は高齢化に伴い誤嚥性肺炎で入院される患者さんが多くなり、そのまま寝たきりにならないように早期から積極的に体を動かすように取り組んでいます。
心筋梗塞や狭心症、心臓手術後に心機能が低下した患者さんに対して、心機能に応じた運動を行い、安心して日常生活が送れるように手助けします。
がんそのものの影響や、がんの治療(手術、化学療法、放射線治療)を行うことにより、身体にも様々な変化が起きます。がんと診断されたときから、障害の予防や緩和、あるいは能力の回復や維持目的に、あらゆる状況に応じて対応を行います。
「話す」「聞く」「読む」「書く」「食べる」というごく自然に行っていることが、病気や交通事故、加齢などで不自由になることがあります。また、生まれつきの障害で困っている方もいます。このような“ことば”によるコミュニケーション能力、“食べる”ために必要な噛む・飲み込むという嚥下機能の改善を行います。
最後に、早期からリハビリテーションに取り組まれても、残念ながら短期間では十分に身体機能が回復できない患者さんもおられます。そのような方にはもともとの疾患の治療継続とともに、障害に応じたリハビリテーションを受けられる適切な医療施設への転院ができるように調整をしております。